2017年12月23日(土)
ハタチくらいの頃はゲーセンで朝を迎えるほどクレーンゲームに夢中でした。今思うとわけわかんないことにたくさんの情熱とお金を使っていたんだけど、それがおもしろくて仕方なかったんだからしかたないです。
その時に獲ったぬいぐるみやキーホルダーがひとつとして手元にないのは残念です。でも残っていたらいたらで邪魔者扱いされているのでしょうけど。おかげでだいぶ上手になったクレーンゲームは、その後しばらく特技として自己紹介で使用し相手を引かせていたものです。
この場合の上手というのは技術ではなくて獲れそうなものを見極められる能力が経験によって備わっただけのこと。だから獲れないと思うものは欲しくても手を出さない、それが無駄なお金を使わずに済む秘訣だと心に刻んでいました。羽生永世7冠が先の竜王奪還時のインタビューで語った「足し算で考えず、無駄なことは考えず、引き算で考えていくところ。経験によるところが大きい。」と、言いたいことはほぼ同じです。
クレーンゲームのことを思い出したのは今日こんなニュースを見たからです。
景品をまったくとれないようにクレーンゲームを設定し、客に遊ばせて料金を騙し取ったとして、警察は23日、大阪や京都のゲームセンターなど数か所の捜索を行っています。捜査関係者によりますと今月、大阪・道頓堀のゲームセンターで店員が景品をまったく取れないようにクレーンゲームを設定したにも関わらず、客に「絶対に取れる」とウソをつき料金を騙し取った疑いがもたれています。この店については今年8月から「景品が取れない」など約20件の被害相談が警察に寄せられていてその被害額の多くは1人10万円以上と高額で、中には「60万円以上を使った」とする人もいたということです。(MBSニュース)
60万円以上もの大金を費やしたことは、店を責めるのと同じくらい自分を責めてあげてもいいと思いますが、そのまっすぐな情熱には羨ましさもあり感心してしまいます。その人にそこまでさせる景品とは何だったんだろう。なんとも罪な景品だ。店の方がよっぽど罪なのはもちろんのことですが。“夢をつかみとりたい人の心につけこんでお金をだまし取る”人類が永遠に克服できない課題のひとつにまた直面しました。
ハタチの頃に朝まで過ごしたあのゲーセンは八回に一回くらいは景品をゲットできていたからすごく良心的なお店だったと今、このニュースを目の当たりにしてはじめて思うわけです。そのせいかあのゲーセンは何年か前に店じまいしてしまい、現在はかろうじて外観は留めているもののフォークリフトや大型トラックが行き交う工場に様変わりしているのがなんとも寂しいです。またひとつ、もう二度と戻れない場所が増えました。写真でも撮っておくべきだった。
つかめなかった物、もどれない時間、辿り着けない場所、そのひとつひとつを夢って呼んでしまえば、あきらめても許してもらえる気がします、オールオーケーになってしまうところがある。朝までゲーセン、まるで夢のようなできごとでした。