しあわせの復習

2018年3月9日(金)

 

毎週土曜日に放送しているテレビ朝日の「人生の楽園」はいいです。
田舎に移住した方々のその地での暮らしぶりを紹介する番組なのですが、ニッポンの普通の人と普通の景色が見れます。誰かの普通ほど貴重なものはありません。脱藩して他の藩に移り住むなんてちょっと前のこの国では考えられなかったことです、いい時代に生まれました。

 

 

だいたい山登りや旅の番組を好んで見ますし路線バスや鉄道ものも好きです。自然や田舎に憧れながら東京で暮らしているのもなにか変ですが、アイドルに憧れているからアイドルになる人なんて極僅か…。と原理は同じです。

 

 

東京は事務所だと思っていますので東京に暮らしているだけで仕事している感が増します。何よりここで耐えれば耐えるほど故郷の駅に降り立った時の空気が旨いのです。あの空気を吸うために東京で素潜りしているのだと実感します。東京にはアワビやウニがごろごろしています。それを捕らえようとする人間のほうがもっとごろごろしていますが。

 

 

長い間さいたまで暮らしていたので終点は大宮だと思いこんでいました。大宮こそが大都会と信じていました。しかし東京で暮らすこととなり大宮にその先があることを知ってしまいました。大宮から先は民家がどんどん小さくなるのです。小さな民家がひしめくように立ち並ぶ、それが東京でした。新幹線の車窓から道路がろくすっぽ見えないほどの林立ぶりです。コンクリートジャングルです。ジャングルにはウニやアワビを狙う獰猛な生きものがうようよしていました。

 

 

よく成功者は「視野を広く」とおっしゃいますが広く持ちすぎると見逃すことも多いのではないでしょうか。ぼくは世界にあまり興味がなく、それよりも日本の隅々を見てみたい願望の方が強いです。これを書いていて気が付きましたが視野を狭く狭くしたいのです。戸倉上山田温泉でスナックとうがらしの看板を目にした時の喜びは本物でしたし、飛行機のビジネスクラスからでは見えない景色に興味があります。

 

 

そんなぼくなので「目が疲れたら緑を見なさい」と母親に教えられ育ちました。そうすれば視力も落ちなくて済むと。だからもう目が緑に反応するのはクセを通り越して反射です。生まれた場所は空か山かの二択なのでそれは簡単なことでしたが、今暮らしている場所には山も畑も田んぼもありません。緑に触れるのはスーパーの野菜売り場だけです。

 

 

ひとつ398円もするレタスを買ってきて丁寧にむしりながら田舎に思いを馳せています。無理を承知で言えばたった398円でする旅です。ほんとうにしんどいことは毎日のようにあります。でも、だからこそレタスの緑が目に染みます。明日の「人生の楽園」はどこだろう。

 

投稿者 片塩 宏朗

お読み頂きありがとうございました。コピーライターをしています。好きなランニングと短歌について時々書きます。フルマラソン:3時間15分28秒、ハーフマラソン:1時間27分59秒、シューズはasicsです。

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