濃い珈琲と甘い麦茶

2018年7月7日(土)

 

仕事が忙しくて何もできないなんて言い訳は、自らの仕事のできなさをアピールしているようなものです。それにしても最近は仕事が忙しくて更新ができませんでした。言ったはしから後悔することばかりですが、梅雨明けを宣言したあとも梅雨空は続いています。

 

 

先週の『鉄腕ダッシュ』で紹介されていた新宿で採取された雨の汚さと言ったら…しかも生き物が棲めないほどの強い酸性だとか。それもこれも自動車や工場から排出される硫黄成分が原因とのこと。汚染雨に悩まされる未来の私たちは巨大な除染傘を差しながら雨のロマンチックさを往年の小説や詩歌の中に見出すしかなさそうです。八神純子の代表曲『みずいろの雨』を聴いて「昔の雨は水色だったの?信じられない!!」そんな会話がなされるはずです、きっと。

 

 

思い返せば小学生の頃、当時は流行語のように「環境汚染」が叫ばれていて「酸性雨」なんて言葉がさかんに使われるようになったのもその頃でした。小学生のぼくらが夕立を浴びては頭が禿げるぞ!隠れろ!なんて小学生らしいデリカシーのない発言をしていたのも思い出と呼んでしまえばそれまです。環境汚染はあれから確実に進んでいるわけですが、最近はわざわざ口に出さない風潮があります。まるで過ぎてしまったことのように。

 

 

雨宿りでコーヒーばかり飲んでいたらいきなり晴れた日が続いて、喫茶店はよく冷えているわけです。梅雨が終わるたびに思うのは、夏の思い出は最強だということです。昨日の夜に食べたものすら思い出せない脳みそが夏の思い出だけは忘れませんから。

 

 

個人的にすごく惜しまれつつ閉店したスーパー「Odakyu OX」の居抜き物件にオープンしたスーパー「OKストア」に通うことになるとは、その安さに驚くまでは想像できませんでした。毎日2リットルの麦茶を買うのが夏の慣わしなのですが、その2リットルの麦茶が100円で買える安さなのです!納豆は4パック70円、魚肉ソーセージ4本が140円、いずれも見たことない安さです。ただしビニール袋は6円します。

 

 

100円あれば自販機でジュースが買えた時代には、麦茶は煮出してつくるものでした。その麦茶にたっぷりの砂糖を入れて飲んだものです。サイダーには卵黄を入れて飲んでいたような記憶もうっすらあります。今では絶滅してしまった習慣です。絶滅してしまった習慣はいくらでもあります。たとえば夏のUFO探しです。

 

 

今、夏の空にUFOを探す人はどれくらいおられるのでしょうか。ぼくは本気でUFOを探していた時期があり、暇があれば空を眺めていました、その気になれば雲も星も目に入る虫もゴミもすべてがUFOに見えました。昔はUFO番組が必ず放映されていてUFOを呼べるツワモノが頭にハンドメイドの器具を取り付けて、アルミホイル的な棒を夜空に振りかざして宇宙との交信を試みたものです。既に絶滅してしまった『川口浩探検隊』は毎回ギリギリのファンタジーな冒険をお茶の間に届けてくれていましたし、ロマンなしでは語れない甘美な世界がそこにはありました。今どきの1億総ツッコミ社会とは対極にあるスキだらけの寛容な時代です。

 

 

そんなぼくですが、一度だけUFOを目撃したことがあります。ある夏の夕方この目は確かにUFOを捕らえました。それはテレビで見た通り、この世のものとは思えない動きをしていました。でも、UFOを目撃した日からUFOへの興味は急速に失われていきます、今ではとんとUFO探しをすることがなくなりました。UFOはもう「ある」からです。好奇心の前では「ない」ものには敵いませんでした。

 

 

それはちょうどはじめてブラックコーヒーを美味しく思えた時となんとなく似ています。知らない景色が見えて“知った顔”が自分の顔になってしまうような感覚です。雨宿りでブラックコーヒーを飲みながら思い出すのは砂糖入りの麦茶を飲みながらUFO探しをしていた遠い夏の日のことなどです。

 

 

投稿者 片塩 宏朗

お読み頂きありがとうございました。コピーライターをしています。好きなランニングと短歌について時々書きます。フルマラソン:3時間15分28秒、ハーフマラソン:1時間27分59秒、シューズはasicsです。

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