2019年8月30日(金)

 

この夏、うちの田舎ではのら猫がさらに増えていて、10匹はうろうろしている気がする。店もない人もいない、おじいちゃんとおばあちゃんだらけの山あいの小さな集落ののら猫は一匹たりとも人懐こくない。目を合わせると警戒するし、ちょっと近づこうものならヤブの方へ逃げていく。おもに家庭からの残飯とか野生の生き物で生計を立てていると思われ、どの猫もモデル体型である。

 

 

誰にも媚びなくていいせいか、のら猫たちは猫らしくニャ〜とは鳴かない。まったく鳴かない。可愛げがない。鋭い眼光をちらつかせながら物置の軒先や草むらのなかを淡々と歩いては、バッタや蝶にいきなり襲いかかる野生味が怖い。

 

 

夏祭りの夜、窓の外に見えたのら猫に夕飯で余った刺し身をあげてみたら美味しそうに食べた。次の日からそこで昼寝をするようになったけど、餌をあげるのは母親に止められたのでやめた、いっとき帰省しているだけの立場としては反論の余地もなくて。

 

 

どちらかと言われたらのら猫が大好きなタイプなので、子供の頃も餌をあげていたことがある。農機具が置かれた小屋で少しのあいだ世話したりもした。十代の後半くらいに。今回のことで久しぶりに思い出した。

 

 

近所のおばさんには、お父さんにそっくりになったねって会うたびに言われるけど、この夏は遂に声もそっくりになったねって言われた。昔からそんな声だったっけ?とも言われた。父親は喉が弱く、声が細く小さい。僕もそうらしい。そうらしいと言うか、それはもうすでに今年になって仕事の場でも言われていたので知っていた。張り切って説明したあとに「もう少し大きな声でお願いします」と言われたらそりゃわかる。家で一人で仕事をしていると声を出すのは必要最低限で、会話のピークはたいてい挨拶。小さい声でも拾う高性能なスマホもよくない。遺伝に環境が拍車をかけているのだからすごい。

 

 

刺し身のせいか、実家に長くいすぎるせいか、最近は近づいてものら猫が逃げなくなった。しかもかすれたか細い声で、ニャ〜と鳴いてくる。かわいい。牛柄の猫と名付けてチーズをあげた。