2024年8月24日(土)
パリオリンピックが終わりました。始まったことも終わったことも実感がないのは、出ていないからだと思います。
今回のオリンピックほど「メダルなんてどうでもいいな」と思ったことはなかったかもしれません。出場している選手たちがメダルを目指すのは当然のことですし、その熱量があってこそのオリンピックではありますが、パリオリンピックではメダルよりも輝くシーンがたくさんありました。
反り立つ壁を登ったり、小粋にダンスをしたり、これまで見たこともない競技に勝ち負けを越えた面白さを感じましたし、柔道女子48kg級で金メダルを獲得した角田夏実選手でさえ金メダル以上に、巴投げの見事さに心を奪われました。もし今後、角田選手を見かけたら金メダルの人よりも巴投げの人だと思うことでしょう。
オリンピックに出場するなんて、ノーマルモードの人生を過ごしていたらありえないことです。ましてそこでメダルを獲るなんて常人のなせることではございません。しかしながら、今回のパリオリンピックを振り返ったときに、真っ先に思い出すのはメダリストよりも柔道女子52kg級で二回戦で敗退した直後に号泣した阿部詩選手であるのは疑いようもありません。
東京オリンピックから3年間、パリオリンピックで金メダルを獲得するその一点だけを目指して心身を鍛え続けてきた人が、その夢に手が掛かりつつある直前で潰えてしまう感情は、それもまた常人には想像しがたいことです。連覇への思いの強さに比例した涙の総量にも驚きましたが、その号泣に対して厳しい言葉を向ける人がこの世におられることにも驚かされました。見苦しい、タレント気取りと匿名をいいことに罵詈雑言を浴びせる。こちらも常人のなせるわざではございません。まさに超人vs 超人の決戦。ただし一方が姿を見せないのはさすがにズルい。その才能をお天道様の下で存分に発揮してほしいと切に願います。
昔から有名人への妬み嫉みは有名税なんてことを言われてきましたが、むしろ支払う側は自らのストレスのはけ口に有名人を利用している方々ではないでしょうか。クソの役にも立たない誹謗中傷の垂れ流しには小さくない代償を支払うべきだと思うのです。オリンピックは人類の可能性やスポーツの楽しさだけを無邪気に見たいのです。