新潟県十日町市の山あいにある鉢集落へ、この春も野を越え川越え山のぼり「絵本と木の実の美術館」に行ってきました。(上記画像は大地の芸術祭公式サイトより引用)
十日町市を含めた越後妻有(えちごつまり)地域で3年に一度開催されている「大地の芸術祭」。その立ち上げを機に廃校となっていた真田小学校を絵本作家 田島征三さんと鉢集落の人々の手によって空間絵本美術館、鉢&田島征三「絵本と木の実の美術館」にリニューアルしたのが2009年のこと。
たくさんの子どもたちの思い出が詰まった小学校が廃校となるのはとても悲しいことですが、この「絵本と木の実の美術館」は廃校となった小学校の“記憶”を活かし、小学校を引き継いだ物語として空間絵本を創り出しています。
絵本のタイトルは『学校はカラッポにならない』。主人公は真田小学校の最後の在校生だったユウキ、ユカ、ケンタの3人。そこに夢を食べるオバケ「トペラトト」、夢をつぶすオバケ「ドラドラバン」と言ったキャラクターの面々と木の実や流木を用いて作り出されたオブジェたちが学校中を生き生きと色鮮やかに飛び回り、物語に不思議な世界観と躍動感を与えています。(写真は美術館に入ってすぐの講堂(体育館)に飛び交う主人公とおばけたち)
「絵本と木の実の美術館」を訪れるのはこれで四回目、この春に見たトペラトトは子どもたちが残した夢と思い出をたくさん食べたせいか随分と大きくなっていました。
2014年のトペラトトは、こんな感じ。今に比べると随分小さいです。さすがに歴史ある小学校だけあって部屋中にたくさんの思い出が充満しているようです。
主人公のひとり、ケンタでしょうか。教室で元気いっぱいに挙手しているのか、おばけたちにおののいているのか。
舞台となる廃校はほとんど当時のまま。黒板に残る落書きも備品も作品の一部、アートに生まれ変わっています。
木の実や和紙で作られた作品も展示されている。自然の風味を活かしながら、大胆に色付けされる作品は、懐かしいのか新しいのか、どこか優しくてどこかセンチメンタルに。
太鼓を叩く人も、前より増えて三人になっていました。廊下に置いてある自転車を漕ぐと、バチを持った腕が上下する仕組みです。窓の外の見える田んぼの風景と相まって浮世離れした空間に。
お昼ごはんは、美術館内の一室にあるカフェ『Hachi cafe』へ。定期的にメニューが変わっているみたいですが、この日はパンのプレートとりんごジュースのセットをいただきます。焼き野菜がとても美味しい、パンも美味しい、こごみも美味しい、特ににんじんのピクルスが美味しい、トペラトトの手作りコースターが素敵でした。
校舎を歩きながら物語の世界を進みながら、自分自身の懐かしい記憶を辿っているような感覚に陥ります。耳を澄ませば、鶯の鳴き声にカエルの合唱、雨の日には雨粒が屋根を叩く音。ここに来ると、今日がいつなのかわからなくなってしまう不規則な時間の流れに迷い込みます。
廃校となった母校がこんな形で生まれ変わるなんて、真田小学校の卒業生のみなさんが羨ましいです。これからの少子高齢化時代、益々多くの廃校が生まれてしまうことでしょう。その全てに大切な記憶が詰まっています。この「絵本と木の実の美術館」は廃校利用の成功例としてメディアに取り上げられる機会もありますが、素晴らしいモデルケースとして模倣して頂いて、“箱”だけではなく“心”も上手に再利用できるような廃校利用の活動が増えればいいなと思います。
絵本の物語を楽しむ、展示作品を楽しむ、そして昔なつかしの小学校に流れる空気と時間を楽しむ。小さな子どもから年配の方まで、それぞれ違った楽しみ方ができる鉢&田島征三「絵本と木の実の美術館」おすすめです。
2018年夏の絵本と木の実の美術館の模様はこちら!
鉢&田島征三「絵本と木の実の美術館」 【開館期間】4月下旬~11月29日(火) 【開館時間】10:00~17:0010月・11月は10:00~16:00(*10月の土日祝は~17:00) 【入館料】大人700円 小中学生300円 *20名様以上の団体100円引き *障がい者手帳の提示で半額、介添者1名無料 【休館日】水・木曜日(祝日の場合は翌日、5月・8月は変更有) 【施設】木造2階建て (設計の概要) 1階 カフェ・企画展示室・ワークショップルーム・トイレなど 2階 展示スペース 駐車場 約40台