2024年を迎えました。歳をとるごとに困りごとが増えているので、今さら浮かれることもありません。もう20年近く13インチのノートパソコンを使用してきましたが、誤字脱字が増えてきたのは老眼のせいです。食べて寝れば治った不調も今では薬が必要です。どこまでも無料だった元気が有料になるのが老いというもののようです。

最近のスポーツ選手が好んで使う常套句のひとつに「夢や勇気を与えたい」がありますが、人生を長くやられているベテランの方々には、それが届きにくいことはベテランの誰しもが感じているところだと思います。前向きな意味しか持たない夢や勇気ですから、それはやはり自分よりも先の方で生きてらっしゃる先輩方からいただく方が、説得力がありますので腑に落ちやすいのです。

オリンピックの金メダルも駅伝の優勝も凄いし感動しますし、場合によっては泣きそうになりますが、それでも事前に「夢や勇気を与えたい」と宣言されていようものなら、出る涙も出ないことになります。ブームを超えてすっかり定着してしまった夢や勇気の押し売りを最初に始めてしまったのは誰なのか?気になるところです。98年長野オリンピックの頃にはまだ存在していなかったように思いますが、ここまで爆発的に普及したきっかけは、やはり東日本大震災ではないかと僕は思います。知りませんが。

新年早々に宮崎駿監督の「君たちはどう生きるか」を見ました。封切りから半年が経っているにもかかわらず、どう生きるか考えたい君たちで館内は満席でした。鬼滅の刃以来の映画館で2時間4分もの長尺に自分の尻が耐えられるかが心配でしたが、片尻ずつ交互にずらしたり浮かしたりしてエンドロールまでこぎつけることができました。

映画の内容はといえば、宮崎駿監督の自伝且つ総集編のようなお話で、今までのジブリ作品を観てきた方なら身に覚えのあるシーンも多く散りばめられていて、金曜ロードショーだけでナウシカを5〜6回見た世代なら、ぜひおさえておいた方がいい映画であるように思います。戦争を生き抜いた監督が、誰しもに潜む拭えない悪意を認めながらも、この世界を受け止めて、人とつきあって、あっち側に行くことを拒否し、まだ現世でものをつくることを選んだ、総集編でありながら今後の所信表明とも言える映画でした。

いつの間にか高校球児はもちろん、アイドルやスポーツ選手も、そのほとんどが自分より年下になりました。社長とか CEOとされる偉い人でさえもです。年々、憧れたい背中が少なくなっていく寂しさを感じていましたが、新年早々、83歳にしてもなお「おわり」ではなく「つづく」を選んだ頑固オヤジのしぶとさをまざまざと見せつけられ、47歳の若造としては夢や勇気をもらわないわけにはいきませんでした。まだまだ薬なしでも元気になれそうです。今年もよろしくお願い申し上げます。


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