実業団女子駅伝チームの移籍・退部事情<2019春>

日清食品の創業者である安藤百福さんをモデルにしたNHKの連続テレビ小説『まんぷく』が絶賛放映中の1月に飛び込んできた“日清食品グループ陸上競技部の駅伝撤退と選手12名を戦力外とするニュース”はまんぷくファンには対岸の火事でも駅伝ファンには炎上級のインパクトでした。

 

萬平さん、いや安藤百福さんは『食とスポーツは健康を支える両輪である』の理念のもと、私財を投入して<安藤スポーツ・食文化振興財団>を設立されるほどスポーツと健康に熱い方、その庇護を受けて誕生した日清食品グループ陸上部は、契約条件が厳しいけれど好待遇との噂が聞こえてくるニューイヤー駅伝優勝2回を誇る名門チームであります。

 

そんな日清食品の決断が、駅伝偏重と言われて久しい日本の長距離陸上界に投じた一石はYahooニュースに掲載されるほどの大きさでしたが、これは陸上界にとってはとても前向きなニュースであると考えようと思えば考えられます。

 

これまで通り駅伝を中心に活動する実業団チームと日清食品のように世界を見据えマラソン主体に切り替えるチーム、企業のプロモーションとしてどちらの競技がより適しているか?企業側が選択できる時代が来たのです。これは日本においてマラソンがプロモーションの手段として確立されつつある証拠です。

 

チビッコたちの将来の夢にYouTuberが選ばれる時代、第308位くらいにマラソンランナーがランクインしてもおかしくはありません。日清食品にさきがけて、GMOアスリーツと横浜DeNAランニングクラブが既にマラソンを選択していることも追い風に。

 

男子チームのお話となりましたが、本題は女子です、しかも駅伝です。ご存知の通りに逆に女子は駅伝参戦を目的とした新規チームの参入が相次いでいます。

2017年 岩谷産業
2019年 ダイソー
2020年 東京メトロ

なかでも来年4月に創設される東京メトロの駅伝部はサプライズです、営団地下鉄と呼ばれていた頃には想像もできない嬉しいニュースです。

 

長距離をリレー形式で走る「駅伝」は、各駅をつないで運行する鉄道業と親和性があります。また、日々の努力を積み重ねて襷をつなぐ姿は、社員一人一人がたゆまぬ努力を継続することにより、お客様に安全で快適な輸送サービスを提供する当社の企業姿勢と合致します。東京メトロは、女子駅伝部の活動を通じ、地域・社会への貢献を目指してまいります。(公式リリースより)

 

JP日本郵政の成功に触発された感もございますが、これもひとえに東京オリンピック効果なのか。日清食品までのインパクトはないにせよ、女子実業団駅伝チームも移籍や退部、引退など活発なチーム再編成が行われているこの春、今まで応援していた選手がある日突然なんの告知もなしにチームから姿を消すのは本当に寂しいものです。

 

が…、そんな寂しい思いをした割には1年も経てば誰が退部したのか忘れてしまう自分もいます。と言うことで昨春に続いて2019年版実業団女子駅伝チームの移籍・退部について各チームの公式ホームページの情報を頼りにまとめてみました。

※敬称略させていただきます。
※(引退)は引退と明記されていた選手です。

 

 

2018-2019年 実業団女子駅伝チーム退部選手

ヤマダ電機
・石橋麻衣(引退)
・畠山実弓
・安藤実来
・青山友莉菜
・小林美穂(※マネージャー)

日本郵政グループ
・上原明悠美(引退)
・寺内希(引退)
・木村芙有加(引退)
・澤口真美絵(引退)
・柴田千歳(引退)

第一生命グループ
・飯野摩耶(→2019年4月 埼玉医科大学グループ※監督兼務)

ダイハツ
・竹上千咲

デンソー
・水口侑子(引退)
・和田さくら

九電工
・安達佳歩
・永沼侑花
・ワイディラ

ワコール
・安川侑那
・小指友未(→埼玉医科大学グループ)
・幾野由里亜(→小島プレス)
・清水遥加

天満屋
・藤田 友里恵
・西脇 舞

資生堂
・須永千尋(引退)
・奥野有紀子(引退)
・前川祐紀
・吉川侑美

ユニバーサルエンターテインメント
・瀧紋奈(→ラフィネ)
・木村友香(→2019年4月 資生堂)
・ワンジュグ

豊田自動織機
・横江里沙(→2018年10月 大塚製薬)
・アン カリンジ

積水化学
・森京香
・湯澤ほのか
・中川文華(→2019年4月 キャノンAC九州)

シスメックス
・高山琴海(引退)
・中村智美
・大貫真実(引退)

ホクレン
・大蔵玲乃

しまむら
・中森紗南
・大槻みちる
・和田春香
・森藤凪

ノーリツ
・松山芽生

三井住友海上
・溝江愛花

日立
・伊坂菜生(引退)
・山下真生(引退)

十八銀行
・山﨑なず菜
・立岩宇美

ルートインホテルズ
・渡久地利佳
・今井優(→2019年4月 しまむら)
・遠藤優梨
・田口理沙
・渡邉恵利佳

大塚製薬
・和田紗季

キャノンAC九州
・竹本由佳(引退)
・青木優子(引退)
・髙橋彩良(引退)
・平井恵(引退)

TOTO
・中原海鈴(→2019年3月 京セラ)
・一紋野女(→2019年3月 キャノンAC九州)
・大森巴菜
・山本紗生
・大賀菜央
・谷口愛
・本田純麗
・シュルブロ

エディオン
・若林由佳
・池田睦美
・渡邉裕子

肥後銀行
・野田沙織
・福田妃加里
・福田詩音

愛知電機
・堀川はる菜(→2018年11月 ダイシンプラント)

ニトリ
・内山真由美
・下門美春(→2018年5月 プロ転向)

京セラ
・藤田 理恵
・立山 沙綾佳
・古瀬麻美

今治造船
・米津利奈(→2018年2月 メモリード)

メモリード
・吉野双葉
・佐伯麻美

岩谷産業
・梅谷愛花(→2018年11月 ダイシンプラント)

 

 

トップチームのなかではJP日本郵政、ヤマダ電機、ワコールの入れ替えが激しく、逆にダイハツは息の長い育成に力を入れるじっくり派。現時点で駅伝に必要な人数6名を割ってしまったTOTOとルートインの今後の選手補強に注目です。

 

昨秋、ユニバーサルを退部されていた注目の木村友香さんは4月から資生堂の所属に。2年前の高島さんに続いてまたも他チームのエースを獲得することに成功した資生堂、今年のクイーンズ駅伝出場をぐんっと引き寄せました。第一生命グループのキャプテンで絶対的な戦力である飯野摩耶さんが選手兼任として埼玉医科大学Gの監督に就任されたのも今までにないケースで大きなニュース。さすが山下監督、陸上界に爽やかな風が吹き抜けました。プリンセス駅伝での第一生命と埼玉医科大学の直接対決が俄然楽しみ。

 

最後に…、昨シーズンも一年の大半を実業団女子駅伝チームのホームページを見ることに費やしましたが、個人的に最も良いと思うホームページ2019の発表です。昨年はキャノンAC九州が輝いたわけですが、今年はJP日本郵政グループに決定です。

大会結果の更新が早く、退部する選手の告知もコメントもきちんと掲載してくれる点は他のチームにはない優しさと仕事の早さ。派手さこそありませんがファンには嬉しい情報と更新頻度でありました。

 

今日から新シーズンもはじまり春のトラックシーズンに突入します、9月にはMGCが控えていますので例年より注目度が高まる実業団陸上界ですが、駅伝に向けたチームづくりにも注目しなくてはなりません、今年も多忙な一年になりそうです。引退された選手のみなさん本当にお疲れ様でした。

 

投稿者 片塩 宏朗

お読み頂きありがとうございました。主にコピーライターをしています。好きなランニングと短歌について時々書きます。フルマラソン:3時間15分28秒、ハーフマラソン:1時間27分59秒、好きなシューズはasicsです。