第2期電王戦第一局で佐藤叡王/名人がPonanzaに敗れる。
電王戦も年々形を変えて、昨年からは叡王VSコンピュータの構図にしているけど、この企画が始まった頃の対コンピュータに対する熱い気持ちみたいなものは薄れた。
闇雲にプロの強さを信じ、その絶対的な聖域にコンピュータが入ることを僕的には「ナニクソ」とは思ったけど、コンピュータが見せる”瞬時に間違えない指し手”を選び続ける強さには驚かされるも、感動はしない。ただ”正確なだけのもの”に人はそれほど心打たれないのだろうと思う。(ただPonanza開発者の山本さんがいつもいい感じで盛り上げてくれるのでそれは楽しい。)
そして、何と言ってもプロ棋士とコンピュータの対局が、そろばんチャンピオンがスーパーコンピュータと暗算対決したりとか、ツール・ド・フランスにオートバイが参戦するとか、そんな類のナンセンスな話に見えてしまったからであり…。
AIは年々進化し、Ponanzaをはじめとしたソフトもどんどん強くなっていると言う。でもそれらAIは人間が作り出したものだし、プロ棋士が積み上げてきた定跡や棋譜を学ばせて進化したものである。Ponanzaもプロ棋士も開発者も凄い。だからその両者を競わせるのはとても前時代的な感覚に思えてくる。ハリウッド映画的な展開なら、「あの電王戦最終局から100年後、日本将棋連盟はAIの手に落ち、将棋連盟会長の椅子に座ったのはPonanzaだった。将棋界は名実ともにAIのものとなりプロ棋士たちはひとり、またひとりと将棋界を去っていった、だが、その時…一人の棋士が立ち上がる。その棋士こそ「伝説の永世七冠 羽生善治」の血を引くものであった。人間とAIの叡智をかけた壮絶な戦いの物語が今、始まる。」となるだろうけど。
そうは言っても、どうせやるならプロ棋士に勝って欲しいのは将棋ファンの願い。佐藤名人があのような形で投了するのはちょっとビックリしたし、残念だった。でも佐藤名人の強さや凄さ不気味さはこの一度の負けで無くなるものではないし、むしろ先手番になった第2局にどんな構想を持っているのか楽しみ。きっと対Ponanza用に色々な手を考えているはずだから、それを出せる展開になったらきっと面白い勝負になると思う。
元々は将棋界を盛り上げる為、米長永世棋聖の高いエンターテイナー性から始められた企画。今回、羽生三冠が叡王にならなくて本当に良かったと思う。レジェンドとか神という称号が本当に似合う唯一無二の人。願わくば羽生三冠にはコンピュータとの公開対局はしないでもらいたい。それはかつての馬場VS猪木のような禁断の果実であり、それに踏み込む時は、将棋界最後の日以外にありえない。羽生さんが史上最強であることは羽生さんが史上最強であるままにしておいて欲しいと思う、僕は羽生ファン。
電王戦第二局 佐藤叡王/名人 VS Ponanza 5月20日(土)姫路城にて。楽しみ。