宣伝会議賞の応募期間が終わりました。今年は応募していませんので残念ながら早くも受賞の可能性がありません。
宣伝会議賞は有名企業が出題する広告コピー1発勝負ですから、誰もがグランプリを目指せるとっつきやすいコンテストだと思うのです。そこがボディーコピーにはないキャッチコピーの良さ、頂点を目指すのも良し、賞金100万円に目がくらむのも良しです。
でも、応募する誰もがグランプリを獲りたいと頑張るのに獲れるのはたった一人、実力で夢が叶うほど世の中は甘くないということです。やはり問題は運ということになります。いいコピーより運を上げる方法を考えてみました。
パワースポットの神社を巡る
とうもろこしを食べる
できるだけ多くありがとうを言う
人を悪く言わない
玄関の右側に鏡を置く
人にアドバイスされるがまま実践してみましたが、その運が宣伝会議賞に使われた感じもなく、おかげで獲得賞金0円。とびきりのパワースポットと名高い長野県の戸隠神社奥社をもう4〜5回は参拝したと言うのにです。これだけ努力してこつこつ貯めてきた運に万が一見放されてしまったら一体何にすがればいいのですか。
…
当然ながら実力です。それに気づいたのが八年前。宣伝会議賞を主催する株式会社宣伝会議が運営しているコピーライター養成講座上級コースでコピーを学ぶことにしたのです。
それではその時の様子をインタビュー形式(自問自答)でお届けします。
どうして宣伝会議のコピーライター養成講座を選ばれたのですか?
宣伝会議賞のグランプリを目指して雑誌『宣伝会議』を開けばいつもそこにはコピーライター養成講座の広告がありました。当時のコピーライター養成講座はコピー視力を矯正してくれる場所として眞木準さんがネーミングされたCAC(CopywriterAcademy Course)を視力検査の記号に見立てたロゴマークを使用されていて、賞金100万円に目がくらんでいた私にはうってつけだと思いました。
CACのコンセプトに共感頂いてありがとうございます。
いえ、でもこれを書くにあたり宣伝会議さんのホームページでCACマークを探したのですが見当たりませんでした。あの素敵なコンセプトを今も使用されているのかはわかりません。この8年間でコピーライターを取り巻く環境も大きく変わりましたので、コピーライター養成講座も大きく変わられたのだと思います。
なるほど、ところでなぜ基礎コースではなく上級コースを選んだのですか?
既に制作会社でコピーライターとして仕事をしていましたし既に30歳を超えていたからです。より少人数の上級コースの方が話が早いと思いました。あわよくば仕事に繋がるとも思いました。それは甘い考えでした。
実際に受講されてみて上級コースの印象はどうでした?
受講生はフレッシュな大学生から社会人のベテランまで30名ほど様々な境遇の方がおられました。男女比は6:4くらいだったと思います。他県から通われる熱心な方もいらっしゃるほどの熱気は人見知りがビビるには丁度いいよそよそしさでしたが初心を思い出すには最高の環境でした。その時に頂いた学生証は今でも大切に保管しています。これより少人数となると人見知りにはやや厳しいかと思いましたので上級コースを選んで大正解でした。
受講生は仲間でありライバルみたいな関係?
よく講座の終わりに飲み会が開かれていたほど活気に満ちていました。私はすべて不参加でしたので飲み会の雰囲気まではお伝えできませんが、同じ釜の飯を食う的な切磋琢磨しやすい環境であると思います。でもなかには「思ってたんと違う!」と最初の1〜2回で来なくなる方もおられました。コピーライラーをあきらめないこととコピーライターをあきらめることは甲乙つけがたい大事な決断だと思いました。
あきらめる大事さですか?
はい。私は20代のころたまたま応募した川柳が入選してしまい東京ドームシティで表彰をされたばかりに勘違いしてしまいました。しばらく無い才能をある錯覚にとらわれてしまいました。中途半端に褒められると中途半端に続けてしまう怖さを学んだ気がします。あきらめるのもいいものだぞと私は私だけに言いたいです。
なぜコピーライターはあきらめなかったのでしょうか?
子供の頃からたくさんの夢をあきらめて今があります、消去法で残されたのがコピーライターでした。もうあきらめるのにも飽きました。きっとコピーライターは向いていると思います、あきらめていないですから。
なるほど、では現役コピーライターとして通われたコピーライター養成講座はいかがでした?
半年間“講義→課題→結果”のプロセスを毎週繰り返しますから、自分の拙いコピーを人に晒す恥ずかしさや自分の実力を丸裸にされる恥ずかしさに耐えることになります。それはコピーライターとして書けるコピーが今どの辺りにいるのか現在地を知ることでもありました。仕事の現場ではわからないリアルな私と向き合えました。リアルな私はすごく普通でした。
その“講義→課題→結果”のプロセスこそ、実際の仕事と同じプロセスではないでしょうか?
確かにコピーを考えて選んで提案する作業は同じです。ただ仕事は力試しではありません、尻を拭けるのか?ということになります。私自身お金を頂いてコピーを考える作業は好きなんですが苦手です、いつも大ハズレに怯えています。最近はより短期間に多くのコピー案が必要とされますから、60〜70点の大ハズレしなさそうなものを優先して考えるようにしています。もちろん100点を狙いたいのはやまやまですが、自分が思う100点を100点に見せる力が私にはありません。
つまりホームランではなく進塁打を狙うと?
仰る通りです。その点、講座では私みたいなものでもホームラン狙いで大振りできるのが楽しかったです。豪快に空振りしても失うものはありません、ちょっと恥ずかしいだけです。私はそれを空振りではなく素振りと呼ぶようにしています。
野球がお好きなんですね?
あきらめた夢のなかには野球選手もあるほどです。その素振りはとてもいい練習になりました。ひとつの課題にコピーを10本出せるとしたら異なる10通りの振り方を試すことを心がけました。その中でも上手に見せようと技術に走ったものほど講師の方には酷評されました。『うまいだけではいいコピーではない、テクニックに頼るな』週一で恥をかく作業はお金を貰う仕事ではできない大変に貴重な経験でした。
素振りのための素振りでは意味がないということですね。それでは課題のコピーで印象に残っているものがあれば教えてください。
二回目の課題で講師の梅本さんから出題された「飲酒運転撲滅のコピー」の時に考えた『お帰りは、タクシーですか?パトカーですか?』というコピーです。このコピーが1位に選ばれて初めて“金の鉛筆”(注)を頂きましたので忘れられない1本となりました。あ、講座続けられそうだなってホッとした記憶がございます。
(注)講師に評価されたコピーには金の鉛筆が授与される宣伝会議コピーライター養成講座の名物システム。
そのコピーを書けた理由や秘訣などありましたら教えてください。
ありません。ただ考え続けられるかどうかだと思います。才能より時間です。
企業秘密的なことですか?
自信がないコピーでも誰かに褒められた途端に自信作に変わります。自分のモノサシなんて移り気です。いいコピーの定義とはいくつかありますが、私は人に褒められるコピーであると思います。褒められやすい人のコピーは褒められやすいということです。それはつまり家族でも友達でも恋人でも会社やクライアントの人でも、自分ではない誰かのためにコピーを書けるかどうか。それに必要なのは才能よりも時間であると思うのです。
コピーライターに必要なのは才能より時間、ですね。本日はありがとうございました。最後に宣伝会議賞は獲れましたか?
獲れませんでした。あきらめることにします。こちらこそありがとうございました。
ちゃんとした本物の修了生の声は宣伝会議コピーライター養成講座のホームページからご覧になれます。受講を検討されている方はどうぞこちらを参考にしてください。