平昌オリンピックのおかげでテレビばかり見ていました。スピードスケート、純ジャンプ、コンバインド、カーリングはくまなく見て、アルペンやスノーボードもできるだけ見て、ボブスレーやリュージュはやってたら見て、こんなにテレビを見たのは四年前のソチオリンピック以来です。選手たちが四年に一度に懸ける一瞬をこちらも四年に一度の眼差しで応援していたわけです。本当に4年に一度とは絶妙です、やりすぎず待たせすぎず、感動を生み出すにはちょうどいい“間”と言えます。
女性アスリートしか見ていなかったせいもあり、とりわけ今回の平昌オリンピックでは女性アスリートの活躍が目立ちました。さらには活躍した選手たちが発するコメント力の高さに感動しきりでした。
「しっかりと氷と対話して、氷とけんかしないように落ち着いて滑ることを意識しました」-小平奈緒選手(1,500mレース後)
「自分の氷としっかり対話して、とにかく自分の好きなようにこの氷を味わおうと思って滑りました」-小平奈緒選手(1,000mレース後)
「金メダルをもらうのは名誉なことですが、どういう人生を生きていくかが大事になると思う。メダルという形は周りの皆さんにとって、私が戦ってきた証しなので、見ていただきたいという思いが強いです」-小平奈緒選手(500mレース後)
「8年前、4年前の悔しさをつないで、皆さんの想いをつないで、勇気をつないで、チームとのたくさんの時間をつないで、最終的にこの結果につなげられたことを大変うれしく思います」-高木美帆選手
「山頂を目前にして1回引き返さなきゃいけないのかもしれない。1回下山して自分を見つめ直して、装備を整えてもう一回登る準備をしようかな」-渡部暁斗選手
「ソチからのこの4年間、ずっと悔しい思いをバネにここまできたつもり。まだ自分は金メダルを取る器でないのがわかった。」-高梨沙羅選手
「私たちが口にも出せず秘めていた“オリンピックメダリスト”という夢が、5人集まると目標になり、全員で努力して一つの現実になった。限界は人が決めるものではなく、自分自分で乗り越えていくものだと感じた」-吉田知那美選手
「このメダルは、私たちだけではなく、今までオリンピックを4年ごとにつないでくれた先輩たちが、いつも力強く氷の上で戦ってくれて、私たちがその先輩たちを超えるために努力し、目指してきたメダルの一つ」-藤澤五月選手
スポーツの試合後のコメントなんて、「最高です」か「課題が見つかったから次回は修正したい」などだいたい相場は決まっていますが、さすがはオリンピアンです、発する言葉の節々からアスリートである前に社会人!のような礼節と気概を感じます。それはマイナースポーツならではの苦労や葛藤をさんざん味わい続けて培われた人間力の高さがなせるものではないでしょうか。平たく言うと大相撲に足りない力です。一概に比べるのは失礼ですが、人気プロスポーツ選手よりもずっと“プロ”に見えました。小平奈緒選手や渡部暁斗選手に至っては手を合わせたくなるほどの求道者ぶりでありました。
メダルまでの道中に平坦な道のりはありえませんが、テレビの特集なんかをyoutubeでむさぼり見ていると皆それぞれにただならぬ悔しさを感じながら四年間を過ごして来たことがわかります。前回のソチを寸前で逃した人、ソチで世界との差を痛感した人、所属チームから戦力外を言い渡された人、姉妹で比べられることに嫌気がさした人、化粧が濃いと言われる人。そんな悔しさを文句に変えて吐き出さずに噛み締め続けた人が平昌でメダルを手にしていたような気がしました。
だからこそ平昌で9位に終わり悔し涙を流しながらも風に恵まれなかった状況をいっさい言い訳せずこう語ったジャンプの伊藤有希選手のこれからに期待せずにはいられません。
「この4年間は本当にたくさんの人に支えて頂いてきたんですけど、その方たちの笑顔が見たくて、そういうジャンプがしたくてここに来たんですけど、それができなくてすごく残念です」
こんなセリフ、人生でいちどでいいから言ってみたい。